むし歯の治療
むし歯にならないために
生物と無生物を比較してみると、多くの場合で、生きている方が長持ちします。枯れた木は、多くの場合近いうちに枯れ果てて死んでしまいますが、生きている木はこの先も末永く生きていくでしょう。これは歯も同じで、歯を何度も削ったり、神経を取ってしまったりすると歯の寿命は縮むことになってしまいます。歯を削ること無くお口の中の状態を改善し、健康な状態を守っていくためにはむし歯を早い段階で発見すること、そして予防がとても大切です。
当院の定期検診では、お口の中の検査や歯のクリーニングを受けていただくことが出来ます。歯のケア、食生活、唾液の力、ストレスなどむし歯の原因から、患者様一人ひとり違うむし歯リスクを知ることができ、むし歯予防のための生活指導を行うことも可能です。是非お気軽に定期検診にお越しください。
主なむし歯の原因
1.唾液量や抵抗力
むし歯予防には唾液量や抵抗力も影響しています。唾液にはむし歯を防ぐという大切な力もあるのです。
2.歯磨き
毎日歯磨きしていても、正しいブラッシングが出来ていなければ汚れが落とせず残ってしまい、むし歯の原因となります。
3.食生活
食事の後、お口の中はしばらく酸性となり、むし歯になりやすい環境になります。食生活が乱れている方はそれを改善するだけでも大きな変化があります。
4.フッ素
フッ素加工を行っているかどうかは、歯質の強度に関係しており、むし歯のなりやすさにも影響を及ぼします。
5.ストレス
ストレスは唾液の分泌量を減少させることがあり、それによってむし歯菌の活動が活発になってしまう恐れがあります。
むし歯について
人間のお口の中では常に、「脱灰」という歯の成分であるミネラルが歯から溶け出してしまう現象と、「再石灰化」という脱灰によって溶け出してしまったミネラルが歯に再度沈着する現象が起こっています。通常ならば再石灰化が起こりますが、歯に歯垢が残っているとどんどん脱灰が進んでしまうため、歯の表面のエナメル質が脆くなってしまい、歯に穴があいてしまうことになるのです。初期むし歯というまだ歯に穴があいてしまう前の段階であれば、再石灰化の働きによって溶け出したミネラルが再沈着することで健康な状態に戻る場合もありますが、歯に一度穴があいてしまえば、むし歯が進行していくに連れて歯は崩壊していき、治療も難しくなります。
むし歯の進行状態について
CO 初期むし歯
歯の表面が溶かされたことによってツヤがなくなっていますが、まだ歯に穴はあいておらず、痛みなど自覚症状の無い状態のむし歯です。白く濁ったり、薄い茶色に見えたりします。この段階であれば削ることなく再石灰化を促すことで健康な歯にすることが出来ます。
C1 エナメル質のむし歯
エナメル質と呼ばれる歯の表面部分に穴があいてしまった状態のむし歯で、この段階でもまだ痛みはありません。エナメル質のむし歯はコンポジットレジン修復と呼ばれる、白い素材を使った削る量の少ない治療法で1日で治療を完了させることが可能です。むし歯の範囲にもよりますが基本的には麻酔も使わないため痛みなく治療が出来ます。
C2 象牙質まで達したむし歯
歯の内部にまでむし歯が進行し、象牙質まで達した状態のむし歯です。冷たい物を食べた時にしみたり、食べ物がよく詰まるようになったりします。コンポジットレジン修復か、むし歯の位置や範囲によっては一部を詰めたり被せたりする「インレー・アンレー修復」、歯を覆う「全部被覆冠」などの治療を行う場合もあります。詰め物・被せ物についてはこちらをご覧ください。
C3 神経まで達したむし歯
歯に大きな穴があいているか、表面の穴は大きくないものの内部で広がっている状態のむし歯で、むし歯が神経にまで達してしまっています。神経が炎症を起こしている場合、激痛が生じます。神経の保存が可能なケースもありますが基本的には根管治療を行って、むし歯の範囲に合わせて「アンレー修復」や「全部被覆冠」、場合によっては「コンポジットレジン修復」で治療を行います。根管治療についてはこちらをご覧ください。
C4 歯の根だけになったむし歯
歯ぐきの上に出ている部分の歯がほとんど崩壊してしまい、歯の根だけになった状態のむし歯です。神経が死んでしまっているため痛みは既に感じなくなっている場合もありますが、細菌感染によって根に膿が溜まると痛みが生じる場合もあります。この状態のむし歯は、放置することで全身の健康に悪影響を与える病巣となる可能性があります。
まずは歯の保存を考えますが、むし歯が大き過ぎる場合や歯が割れている場合は抜歯となることがあります。当院では、マイクロスコープの画像をお見せして患者様に確認していただいています。歯の保存が可能と考えられる場合は根管治療を行った後で被せ物を作ります。また、被せ物を長期にわたって問題なく使い続けることが出来るよう、歯の部分的な矯正や外科処置のご提案もさせていただくことがあります。
むし歯の治療と予防
フッ素と再石灰化が歯を修復する
「再石灰化」とは、唾液が細菌によって作り出された酸を中和し、洗い流し、歯から溶け出してしまったリンやカルシウムを歯の表面へと戻す働きのことです。
「フッ素」は溶けてしまったエナメル質の修復を行ったり、歯質の強化、細菌の活動を抑制したりするなどむし歯予防に効果を発揮する成分のことです。歯磨きの際にはフッ素入りの歯磨き粉を使うようにして初期むし歯の修復を行っていきましょう。
MI(ミニマム・インターベンション)
歯を削る量を最小限に
むし歯治療というと、多くの人が「ドリルで歯を削る嫌な音」や「銀歯」を想像するのではないでしょうか?しかし、今では詰め物の接着性が高まったことにより、従来のようなイメージのむし歯治療やその考え方は大きく変化してきています。
現在のむし歯治療には、歯を削る量を最小限にするというMI(Minimal Intervention/ミニマム・インターベンション)という大きな原則があるのです。
歯の細部まで確認できる拡大鏡
拡大鏡は、約2~7倍の倍率に拡大して歯の微細な表面を確認することができ、歯を削る量を最小限に抑えることができます。歯と補綴物の隙間にはむし歯が再発する可能性がありますが、拡大鏡を使用して歯と補綴物の境目をしっかりと適合することで、むし歯の再発リスクを軽減した精度の高い治療が可能です。
コンポジットレジン
見た目も綺麗なむし歯治療
ペースト状で、歯の色に近い樹脂製の素材「コンポジットレジン」は特殊な光を照射すると短時間ですぐに固まるという特徴を持っています。コンポジットレジンは小さなむし歯ならば短時間で、しかも保険内で白い綺麗な素材で治療出来るだけでなく、歯と接着するため歯とコンポジットレジンの隙間からむし歯になるリスクも少ないというメリットがあります。
治療方法
- むし歯・変色部分を削り取ります。
- 歯の上にコンポジットレジンを盛って、形を整えてから光を照射し固めます。
- 研磨して治療完了です。
根管治療
根管治療を行う必要がある症状
- 歯の奥の方の歯ぐきに痛み、違和感を感じる
- 何もしなくても歯が痛む、激痛を感じる
- 食べ物を噛んだ時に響く感じがする、痛む
- 痛みや違和感のある部分に口内炎やおできのようなものが出来ている
以上のような症状が出ているケースでは、根管治療が必要となる可能性があります。むし歯が大きくなったことで歯の中の神経にまで達してしまっている、神経が炎症を起こしている、神経が死んでしまっているなどの場合はむし歯を削り取るだけでなく、根管治療という歯の神経の処置を行う必要があります。これがいわゆる歯の神経を抜く処置のことです。
根管治療の流れ
レントゲン撮影を行い、場合によってはCTも撮影します。細い器具を使い、歯の中の神経が入っている部屋に残る神経の残骸などを除去していきます。十分に根の中の細菌を取り除いたら再度細菌感染を起こすことのないよう、神経の部屋に蓋をします。この一連の処置が「根管治療」です。また、以前この根管治療を行ったが再び細菌感染を起こしてしまっている場合や、それによって膿が出ている場合にも根管治療によって治療します。
なるべく抜かない治療を
根管治療は再発させないことが重要ですが、実際には、最初の根管治療ではごく簡単な、ただ痛みを取り除くだけの処置しか受けてないという場合もあります。そのため時間が経過してから再度痛みが生じるようになり、更に治療が困難な状態になってから当院に根管治療を行いにいらっしゃる方も少なくありません。そのような患者様の中には「抜歯しか方法はないのだろうか…」と悩んだり、落ち込んだりされている方もいらっしゃいます。歯を失うということは、とてもつらいことですよね。
当院が何故、高度な技術が求められる精密根管治療を行っているのかといえば、「再発のない根管治療をご提供する」ことで患者様にそのようなつらい思いをさせないためです。症状が悪化してしまっている感染根管だとしても、第一に抜かずに治療することを考え、患者様のご希望やお悩みについて詳しくお伺いし、十分にコミュニケーションを行いながら、患者様一人ひとりの症状に最も適した治療計画をご提案いたします。